Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
男はいつもベッドを囲うカーテンを開け放している。
見舞いに来ると大部屋だから、どうしても顔を合わせてしまう。
恵也がその男のベッドのそばを通り過ぎる時は、知らん顔をしているくせに、奈緒子が通りかかると、雑誌からパッと顔をあげて、奈緒子の制服のスカートから伸びる太腿の辺りを見る。
テレビの音で誤魔化していたつもりだったけれど、声が聞こえていたのだと思う。
「やだあ!あの男。
マジ、キモいんだけど。
あいつに見られると電車で痴漢されてるみたい!こっち、
見んなよって言ってやりたいよ!」
自分が好きでそんなスカート丈にしているのに、奈緒子は恵也に本気で文句を言う。
それなのに、恵也は、
「気のせい、気のせい!」と笑って取り合ってくれなかった。
恵也が退院する前日。
「一階の売店でジュースを買ってくる」
恵也が言い出して、ベッドから降りる。
「あ、待ってよ。奈緒子も行く!」
奈緒子もベッドから降りた。
全開になった胸元を直し、せわしなく白いシャツの前ボタンを留める。
いつもの病室での行為を済ませた後だった。