Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
ベッドの中で奈緒子に腕枕をしながら、恵也は寝物語に語った。
「俺と尚哉は、血が繋がってないんだよね…義理の兄弟。
うちの母ちゃん、二度も離婚してる。
尚哉は、二番目の父親の連れ子。
子連れバツイチ同士の再婚でさあ。
俺は自分の本当の父親、全然知らねえから、父ちゃんが出来て嬉しかったな。
初めて尚哉に会ったのは、俺が小学一年の時。尚哉は幼稚園だった。
歳が近かったから、昔はよく遊んだよ。今とは違って。
親たちがうまくいってたのは、最初だけだったね…
父ちゃんは、仕事で留守ばっかだった。
喧嘩してるとこなんて見たことなかったのに、なんでかよくわかんねえけど、いつの間にか離婚することになってさ…
俺は父ちゃんが好きだったから、淋しかったな。
尚哉と俺、分け隔てなく可愛がってくれた。
優しい人だったんだ。
藤木は尚哉の父ちゃんの苗字なんだよね。
あんまし、子供の苗字がコロコロ変わるのは、良くないって、離婚しても俺らの苗字はそのまんまにして、母ちゃんだけが旧姓の「佐藤」に戻ったんだ。
尚哉は母ちゃんが引き取った…
父ちゃんが自分だけじゃ育てられないから、尚哉を施設に預けるって言ったから、母ちゃんがそれなら私が育てるって。
そんで、父親だけが出て行った。
俺が小学5年、尚哉は4年の時の話。
今でも、父ちゃんは毎月、うちの銀行口座に俺と尚哉の養育費振り込んでる」