Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
その頃の恵也といえば、スキンヘッドで眉毛が半分なかった。
松葉杖がとれて、やっと普通の生活を始めた矢先に、恵也は、また問題を起こした。
一週間前に、髪を金髪に染めて、登校し、校長室で厳重注意を受けた。
反発した恵也はパーマも染髪もしてないし、これなら文句ないだろ、とばかりに頭を剃り上げてしまったのだ。
「ふうん…そうなんだあ」
恵也の口から尚哉とは血の繋がっていない兄弟だときいて、奈緒子は妙に納得する。
二人はあまりにも違い過ぎた。
容姿も性格も。
背が高く、大きな黒い目と通った鼻筋を持つ優等生の尚哉。
尚哉はいつも黒い大きなスポーツバッグを肩に掛け、通学していた。
時には、黒いナイロン製のギターケースも持っているのを見かけた。
小柄で、すばしこく、茶色の瞳を持つ恵也はいつもふざけていて、いつも楽しいことを探している。
奈緒子と同じく学校の勉強が嫌いだ。
進路などなるようになる、としか思っていない。
近くの商店街にあるスナックで雇われママをしている恵也と尚哉の母は、22歳で長男・恵也を生んだといい、真っ赤な口紅とマニキュアがトレードマークだった。