Breathless Kiss〜ブレスレス・キス



相変わらず、奈緒子は、
自分の家ではいい子を演じた。


「今夜は歌織んちに泊まって、
勉強するねえ」


恵也のうちに泊まる時、奈緒子は自分の両親には、そう伝えていた。


もう、歌織とは友達付き合いをやめたのに、両親は歌織を知っているから、話が早くていい、と名前を使わせてもらった。



しかし、嘘はあっけなくばれてしまう。



奈緒子が歌織と一緒にいるはずの夜。


奈緒子の母が何も知らない歌織と、ばったりと近所のスーパーで出くわしてしまったのだ。


「あら。香織ちゃん!
奈緒子はどこなの?」


汚れた白衣姿で訊く奈緒子の母に、歌織は怪訝な顔をして答えた。


「えっ?知らないですよ。
最近全然、遊んでないです。
奈緒子ちゃん、彼氏出来てから、そっちばっかだし。
ちょっといろいろあって、奈緒子ちゃん、私とは友達やめるって、怒っちゃって。だから、全然会ってないです。」



温厚な奈緒子の父もこれには激怒した。


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