Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


家出した奈緒子が、深夜、繁華街のゲームセンターで補導されてしまったからだ。


警察沙汰になるよりかは、恵也の部屋にいた方がまだマシだということになった。

それが、両親の出した解決法だった。


それをきっかけに、奈緒子は更に、恵也の部屋に入り浸り、そこから通学するようにまでなってしまう。


恵也が喧嘩や煙草で停学になったり、暴走行為で捕まりそうになったり、かなり危ない橋を渡っていたのに、そんなに大事にならずに済んでいたのは、単に彼の運が良かったからだ。



同じ高校の恵也の友達は、ほとんど3年に進級しなかった。

学年が上がるたびに留年、退学するパターンで学校を去って行った。


恵也はなんとか、ギリギリに3年に進級し、奈緒子も2年生になった。


そして、恵也は夏休み、友達に誘われてやってみたサーフィンに夢中になり、のめり込んだ。

髪を伸ばし、サーファーブランドの洋服を着るようになる。

その代わり身の早さに誰もが驚いた。


「下手すぎるから。まだ見せたくない」
と言って、海には奈緒子を連れて行ってくれなかった。


行きたい、と奈緒子がタダをこねても、

「先輩の車に乗せてもらい、四人くらいで行ってるから、奈緒子の乗るスペースない」と言って、断られた。


奈緒子は薄々、感じ始めていた。


サーフィンに行く回数ごとに、
恵也の愛が少しずつ消えていく。


一緒にいても、恵也の心はどこかに行ってしまっている……

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