Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
変わっていく恵也に気付きながらも、奈緒子はただ祈るしかなかった。
恵也が元の恵也に戻ってくれるのを。
それでも、週末、サーフィンから帰ってきた恵也は奈緒子を呼び出し、抱くことをやめなかった。
それが奈緒子にしてみれば、唯一の望みであり愛情の証しだと信じていた。
やってることは同じなのに、
終わると腕枕もなく、優しい言葉もなく寝てしまうようになった恵也。
真っ黒に日焼けし、逞しくなった。
手を伸ばせば、素肌に触れられるのに、違う人みたいだ。
奈緒子は寝返りを打ち、恵也に背を向ける。
「どこに行っていたの…?」
淋しくて仕方がなくて、嗚咽が込み上げてきた。
今まで、男と気軽に寝るありさを内心軽蔑していたのに。
ありさの気持ちがわかる気がした。
そして、9月の終わり。
「真剣に聴いてもらいたい話があるんだ」
恵也は奈緒子の目の前で、神妙に語り出した。
「…お前には俺より相応しい男がいる。俺がいたら、邪魔になる。
……別れよう…」
突如、煙草片手に恵也は奈緒子に向かっていった。
恵也の口から、
直に吐き出された別れの言葉。
この日が来ることは分かっていた。
いつからか、覚悟していた。