Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


両親は、とても優しかった。


私が小学六年生の時、父親が務めていた自動車販売会社をリストラされ、ボーナスなしの缶詰工場の契約社員で働いていたから家は少し貧乏だった。


築15年の3LDKの団地住まい。

母も弁当屋のパートに出て、微力ながら家計を助けていた。

その後、両親は飲食店を始めたけれど、商売繁盛とはなかなかいかなかった。


でも、私自身は家が貧乏だと思ったことは一度もない。

一人っ子だったから、南向きの六畳間を子供部屋として貰い、両親にはすごく大切にされた。


特に、父は私を『なおちゃん』と呼び、小さな頃から猫可愛がりしていた。


家ではアイドルみたいな存在なのに、学校ではあんまり存在感のない目立たない子だったから、そのギャップは常に自分の胸に抱え込んでいた。



そんな私、坂本奈緒子が、クラスメイト達の誰よりもいち早く手に入れたのは、早熟な『愛と性』だった…





私の青い春が唐突に始まったのは、中三の夏休み。


あと二ヶ月後に15歳の誕生日を迎えるという頃。


少しオーバーにいうと、私の人生を変えてしまう出来事が起きる。


去年の猛暑からすれば、過ごしやすく感じる夏のことだった…



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