Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
奈緒子の方が呼び出したくせに、喋るのは歌織ばかり。
それで、返ってくる奈緒子の返事は
「別に。普通」みたいな気の抜けた感じ。
疲れてきた。
「彼氏の恵也、元気ぃ?
うまくいってるの?あ、ねえ、尚哉には会ったりする?」
それでも諦めずに、また質問をしたのは、奈緒子とまた前みたいに仲良くしたかったからなのに。
「….あのさあ」
奈緒子はやっとまともに口を開いた。
「恵也のこと、呼び捨てにすんなよ。
尚哉に会うか会わないかなんて、歌織に関係ねえじゃん。
なんでそんな質問に答えなきゃいけねえんだよ?」
「…」
びっくりした。
奈緒子の口からそんなセリフ。
いけねえんだよって…
言葉遣いまでひどい事になっている。
黙って、奈緒子の顔をまじまじと見てしまった。
目の周りを黒く縁取るメイクで二倍ぐらいになった奈緒子の目。
ダークブラウンのアイシャドウにマスカラたっぷりのまつ毛。
唇にはピンク色のグロス。
これで学校行ってるんだろうか…
あんたの高校、校則ないの?っていいたくなる。
奈緒子は攻撃的にこちらをキッと睨み、歌織の視線を跳ね返した。