Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
金曜日の夜10時。
明日は休みだし、このくらいの時間でも許される気がした。
せっかく電話しても不在じゃ気力が萎えてしまう。
ドキドキしながら尚哉の家に電話をかけた。
歌織から、尚哉にアクションを起こすのは、2度めだ。
尚哉には中3の時に1度、告白したけど「ありがとう」と言ってくれただけで付き合ったりはしなかった。
長いコールの後、聴こえてきたのは
藤木尚哉の低い声。
『もしもし…』
「あ。もしもし。私、野島歌織。
久しぶりだね…!元気だった?
あのさ、突然なんだけど、奈緒子のことで話したいことがあるんだ…
…今、いい?」
尚哉は、自分の兄が一つ歳下の彼女と別れたことを知らなかった。
『恵也は恵也。
俺は俺で生活してるから…』
電話口でそう言った後、尚哉はしばらく沈黙した。
「奈緒子、今、すごく大変なことになってるの。
恵也先輩と別れて、学校も行かずに引きこもってる状態らしいの。
もうすぐ17歳の誕生日なのに。
私、奈緒子が可哀想で…」
『そっか…話は分かったよ。
俺が坂本に話してみるよ。留年なんて
ことになったら、大変だし…』
歌織同様、尚哉も奈緒子がこんな事になってしまったことに責任の一端を感じているみたいだった。