Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
『野島、今から公園に出て来れねえ?』
日曜日の夜8時。
歌織は尚哉から電話で呼び出されて、近くの公園へ行った。
おとといの夜、電話では話したけれど、会うのは卒業式以来。
話題は奈緒子の事だって分かっているのに、まるでこれから愛の告白を受けるみたいに、歌織の胸は高鳴ってしまう。
奈緒子と1年くらい前に会った公園。
陽のあるうちと、夜の公園は全然違う。
夜は少し不気味。
外灯がスポットライトのように当たる中、尚哉はスポーツタイプの黒い自転車を携えて立っていた。
「今日、坂本と2人で遊園地に行ってきたんだ。さっき駅で別れたとこ」
尚哉は言った。
…また立ち話。
ベンチがそばにあるのだから、座りたかったけれど。
「あいつと色々話したよ」
尚哉の潤んだような瞳が、まっすぐに歌織を見つめる。
丸くて人懐こい、可愛い瞳。
「酷い別れ方だったけど、今でも恵也が好きだって言ってて泣いてたよ…
なんでこうなるのかわからないって。
でも、俺の前で泣くだけ泣いたら、ちょっとすっきりしたみてえ。
とりあえず、学校にいく約束はしてくれたよ」
場違いにも、歌織は尚哉のその瞳に吸いこまれる感じがして、身動きが出来なくなってしてしまった。