Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
夏祭りから始まる嵐
ーーー16年前。
奈緒子は、同じクラスの親友・野島歌織(のじまかおり)と週末、地元の夏祭りに出掛ける約束をした。
「あたし、浴衣着る!藤木尚哉君、
お祭り来るって言ってたもん!
絶対、歌織の浴衣姿見せたい!」
歌織は昼休みの教室で、つばを飛ばしながら力んで言った。
歌織はその頃、同級生に片想いをしていた。
その同級生……
藤木尚哉(ふじきなおや)は背が高くて、天然パーマの黒髪と大きな漆黒の瞳を持つちょっとエキゾチックな感じの容姿の男の子だ。
割と寡黙な感じで飄々としているのだが、やることにそつがない。
文化祭では率先して行動し、体育祭ではリレーの選手になって活躍するし、応援合戦では100円ショップの羽根つきの扇子を振り回して盛り上げる。
クラスのムードメイカー的な存在だ。
ガリ勉タイプではないけれど、生徒会の書記もやっていた。
生徒からも先生からも一目置かれる存在だった彼は、苗字ではなく、親しみを込めて皆から「なおや」と呼ばれていた。