Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


奈緒子が部屋に入ると、眼鏡を掛けた人事部長と総務課長は長時間の面接ですっかり疲れた様子だった。

仏頂面に椅子の肘に頬杖などつき、あんまり緊張感がなかった。


こっちはギチギチに緊張しているのに。


人事部長は奈緒子の履歴書の特技の欄に「料理」と書いてあったことに触れ、話の流れで奈緒子の実家がラーメン屋だと知ると、目を輝かせた。


部長は大のラーメンが大好きで、あちこちの店を食べ歩きしているという。

それまで、苦虫を噛み潰したような顔をしていたのに、急にニコニコ顏になった。

これは良し、と手応えを感じた。

本当は料理なんてたまにしかやらないけれど、書いて良かった…と思った。

奈緒子が屋号を伝えると、部長は大きくうなづいた。


『あー。あんのん亭。知ってますよ。
親父さん、元気?
なんかまたラーメン食いたくなったなあ。コレステロール高いから、控えろって医者に言われてるんだけどね』


同席していた総務課長も
『ほう。そんなに美味いんですか。
ちなみに場所どこですか?』

などと食いついてきて、とても和やかなムードで面接は終わった。

そして、結果は、なんと4人いるライバルを蹴落とし、見事採用。


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