Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
家族で手を取り合って喜んだ。
本当に運が良かったとしか思えない。
初めて実家がラーメン屋で良かったと思った。
『今時、そんなもの通用しないよ』という人もいるけれど、英語の専門学校生だった時、必死の思いで取った英検2級の資格。
それも受付嬢としては、良かったのかもしれない。
中途採用とはいえ、おバカさん高校から、誰でも入れる英語の専門学校出身の奈緒子が、こんな立派なビルを持つ会社に就職できたのは、
『世界の七不思議のひとつといっても過言じゃないよね!』
と自分でも言ってしまう。
自分では、人より少し器量が良くて
(たまに美人だと言われる).まあまあスタイルもいいせいだと思っている。
でも、それはメイクをしたら、の話で、しなければ結構地味顏だ。
化粧映えがする顔なのだ。
会社での華やかさは、仮面みたいなものだ。
前に、薄化粧でショッピングしてたら、
『貴女みたいに、少し惜しい感じの容姿の方がナンバーワンになれるんだ。
稼げる仕事に興味はない?』
と怪しげな男に声を掛けられたことがある。
(それは、どういう意味なのか……?
今だに解けない謎だ。
稼げる仕事が何なのかよりも、
ずっと気になる)