Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
さっき、自動ドアから入ってきた男は、うちの会社に営業できた取引先の人間だ。
奈緒子の横に座る25歳の高田礼香が応対し、営業一課の課長にアポの確認の内線電話を掛けてから、お客を中に通した。
6歳年下の後輩礼香は、今時な感じの大きな目をした可愛いい子だ。
その顔立ちの通り、すごくハッキリした性格だ。
3年前、大卒で入ってきた彼女は、初めて奈緒子と二人で受付に入った時、
『ここだけの話なんですけど、私、面接の為に目を二重まぶたに整形したんです。
印象良くないと内定もらえないでしょ。
坂本さんはどこもいじってないんですか?』
と、いきなりの告白と質問をしてきて、奈緒子は本当にびっくりしてしまった。
言った後、礼香はハッとして
『気を悪くしたなら、謝ります。
ごめんなさい。私、思ったことすぐ言ってしまうんです』
とすまなそうに頭を下げた。
なんとなくその潔さが気に入り、奈緒子は礼香を可愛がることにしたのだった。
ウィィン…
再び、自動ドアが開く。
この時間は、逆光になるからちょっと人の顔が見えにくい。
しかし、入ってきたダークスーツの男は、そのシルエットだけで誰だかすぐにわかった。