Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
『どんな生徒だったんですか!?
やっぱりカッコ良かったんですか!?
その時、彼女とかいたんですか!?
部活とか何やってたですか!?』
彼女達はツバを飛ばさんばかりに、
奈緒子を質問攻めにした。
『中学では、彼女はいない…
でも、モテてた。
高校は別だったから詳しくは分からない…ロックバンドでベースギターやってたらしいよ』
そう答えると、当時新入社員だった礼香は『ベースギター…』と言いながら目をハートにした。
尚哉の兄と付き合っていたことは、内緒にした。
面倒な噂になってもいけない。
それに、奈緒子が高校生だった一時期
やんちゃだったことは、恥ずかしいから、トップシークレットにしていた。
若かった頃の話は禁物だった。
早めの方向転換が功を奏して、高校の卒業アルバムには、肩までの黒髪をなびかせた清純そうな自分が微笑んでいる。
高1の夏休み、彼氏の恵也に合わせて金髪に染めたことなどなかったように。
若かった頃の話は、しないにかぎる…
言わなけれは、隠し通すことは、可能であり、墓穴を掘ることはない。
こんなガラス張りの洒落たオフィスビルに勤務する華やかな受付嬢の青春時代が男と煙草とコンビニの店先だなんて…
……そんな過去、いらない……