Breathless Kiss〜ブレスレス・キス
実は、奈緒子もほのかな想いを寄せていた。
でも、三年生になってすぐ、歌織に「私、尚哉くんが好きなんだ」と先に言われてしまい、がっかりした。
(もうダメ。尚哉は歌織のお手つきだ…)
律儀な奈緒子は、気持ちをすぐに切り替える。
「応援するから、頑張ってね」と言って歌織の手を握ったのだった。
でも、歌織には悪いけれど、
(望みは薄いかな…)と思っていた。
なぜなら、三ヶ月前。
歌織は、修学旅行から帰ってきた翌週に勇気を出して尚哉を校舎裏に呼び出し、決死の告白した。
あなたの事がすきです、と。
すると彼は『マジで?ありがとう!』と笑顔で爽やかに言い、去ってしまったという。
(それって、振られたんじゃないの…)
恋や男の子にはうとい奈緒子でもそう思うのに、歌織は『ありがとう!』と言われた事が相当嬉しかったようで
『これ絶対、脈あるよ〜!もっと押すっきゃないよ〜!』と、一人で騒いでいた。
「ジャニ系で学年でも指折りのモテ男藤木尚哉君は、硬派で縛られたくないから彼女作らないんだよ!」
歌織はお祈りするみたいに手と手を組み合わせ、目をハートにして言った。
尚哉とより一層の接近遭遇を期待した歌織が、夏祭りで浴衣を着るというので、奈緒子も浴衣を身にまとった。