Breathless Kiss〜ブレスレス・キス


「うわ…キモ。…朝礼でそんなこというなんて…ぶっ飛ばしたくなる…」


ふいに斎藤の生温かい舌で耳朶をこねくり回された時の感覚が蘇り、
枝豆を咀嚼しながら、奈緒子は眉を顰めた。


高田礼香が
『斎藤のやつ、先週の日曜日、山手にある教会で挙式したんですよ』
と言っていたことを思い出す。


礼香の同期の阿部ユカリは、同じ経理課というだけで斎藤の結婚式に招待され、仕方なく列席したという。


『言っちゃあ悪いけど、迷惑以外の何物でもないですよね!
ユカリなんて、世話になるどころか、あいつのミスの尻拭いばっかさせられてるのに。
ご祝儀だって包まなきゃならないし、ジーパンで出席するわけにもいかないじゃないすか。

それに、本当に似合わないですよねー!山手の教会なんて。
ステンドグラスが泣きますよ!

しかも斎藤、式が始まった途端、1人で感動してボロボロ泣いてたらしいすよ。

新婦は、斎藤となぜかそっくりだったらしい。
夫婦って長年連れ添ううちに似るっていうけど、既にガチで似てるって、ユカリ、ウケてました!

新婚旅行は、ロサンゼルスですってぇ。
なんでも新婦が絶叫マシン大好きで、シックス・フラッグス・マジック・マウンテンとかいう、テーマパーク行くらしいですよ。

斎藤ごときが生意気ですよね!

おまけにあいつ、式の最後の挨拶で、
「夜は違う意味で新婦を絶叫させます」とかほざいたらしい。
親の前でですよ!?
信じられないってユカリ、ウンザリしてました』

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