花送り―宗久シリーズ番外―
雨が続くと、気持ちが沈む。




ううん…去年までは私、雨は嫌いじゃなかった。



大地を浄化してくれる雨が、嫌いじゃなかった。









気持ちが沈んでいるのは、雨のせいじゃないんだ。






分かってる。


自分でも分かってるよ。





だってあれから私は、先生の顔を見れないから。



大好きな先生の笑顔が、胸をちくりと刺すから。







目が合っても、反らす。


だって、私だけの特別じゃないと分かってしまったんだもん。






それでも先生は、私を見つめて笑うんだ。


全てを理解してくれている様な瞳で、笑いかけてくるんだ。






先生………。



先生の優しさは、時々残酷に感じてしまうよ。



優しすぎて……泣きたくなる。










こんな気持ちの時は、校庭の中庭に行く。






私の好きな花が、梅雨にだけ咲いてくれるんだ。









紫陽花。






私は、紫陽花が好き。





雨に濡れても、気高く強く在る、美しい紫陽花が好きだ。






.
< 10 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop