花送り―宗久シリーズ番外―
見上げた先生の端正な顔は、やっぱり綺麗で、穏やかで……。



初対面の時、私を見つけてくれた時と同じ瞳で……。



いつも、優しく私を見てくれている時と同じで……。








私は、改めて心の在りかを確認させられた。










先生、先生。





私、先生が好き。



大好きなの。





直感したの。



先生は、わたしの世界を変えてくれる。

救ってくれる人だって。





先生は………………。















「君は………自分の名前を覚えている?」














…………先生?











紫陽花に触れた手が、私の頭を静かに撫でてくる。





大きな暖かい手が……撫でながら………私の顔を、黒い瞳に映る程に見つめながら…………。










「名前、忘れてしまったんだね?」










…………名前?



私の?








私の名前は………。









「声も、忘れてしまったんだね」








………何を言ってるの?


先生。




意味がわからないよ?





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