Blue Note ― ブルーノート
群青の悪魔
逃亡
ゼロは暗闇の中を走っていた。
双子の弟であるイチの手をにぎりしめ、走っていた。
下がまる見えの、鉄製の非常階段を一気に駆け降りる。 サビた鉄筋を蹴る音が2人分、暗闇に響き渡っていた。
辺りは焦げた油の臭いやサビた金属の臭いが入り交じり、堪え難い異臭が鼻をつく。
どうやら、ボイラー室のようだった。だが、今はそんな事どうだっていい。
――早く、早くしないと、奴らが来る。
ゼロは一瞬だけ視線を背後に向け、後ろを走るイチの姿を確認する。 イチがゼロと繋いでいないもう一つの手で、大事そうに胸に抱えているノート。
見かけはただのノートかもしれない、だがそれは悪魔の兵器と呼ぶに相応しい代物だ。
現に、このノートは既に一人の男の人生を狂わせ、その男は、世界を狂わせようとしている。
だから、この世界が狂う前に、この悪魔を葬(ほうむ)り去らなければならない。永遠に、誰の手も目も届かない場所へ。
ゼロ達のいる世界はソフィアと呼ばれ、地形はまるでドーナツのような形をしていた。
中心部分には、ソフィア湖と呼ばれるこの世界で最も巨大な湖がある。ドーナツで言うところの、真ん中の穴の部分だ。そこが湖になっている。
そして必然的に、湖に近ずくほど都市は発展し、遠ざかるほど都市は衰(おとろ)えていった。
ゼロ達がいるこのMBビルは湖から僅か数kmほどしか離れていない。
都会のど真ん中に立つ巨大なビルだ。
ソフィア医学界の心臓とも言われるこの建物では日夜、新たな医療技術が研究されている。
だが、それはただの見せ掛けだ。まがい物に過ぎない、夢物語だ。
奴らが国民の為に医療の研究をしていた日なんて、一度だってありはしない。
奴らの研究している物、奴らが創りだそうとしているもの、それは――“賢者の石”。
双子の弟であるイチの手をにぎりしめ、走っていた。
下がまる見えの、鉄製の非常階段を一気に駆け降りる。 サビた鉄筋を蹴る音が2人分、暗闇に響き渡っていた。
辺りは焦げた油の臭いやサビた金属の臭いが入り交じり、堪え難い異臭が鼻をつく。
どうやら、ボイラー室のようだった。だが、今はそんな事どうだっていい。
――早く、早くしないと、奴らが来る。
ゼロは一瞬だけ視線を背後に向け、後ろを走るイチの姿を確認する。 イチがゼロと繋いでいないもう一つの手で、大事そうに胸に抱えているノート。
見かけはただのノートかもしれない、だがそれは悪魔の兵器と呼ぶに相応しい代物だ。
現に、このノートは既に一人の男の人生を狂わせ、その男は、世界を狂わせようとしている。
だから、この世界が狂う前に、この悪魔を葬(ほうむ)り去らなければならない。永遠に、誰の手も目も届かない場所へ。
ゼロ達のいる世界はソフィアと呼ばれ、地形はまるでドーナツのような形をしていた。
中心部分には、ソフィア湖と呼ばれるこの世界で最も巨大な湖がある。ドーナツで言うところの、真ん中の穴の部分だ。そこが湖になっている。
そして必然的に、湖に近ずくほど都市は発展し、遠ざかるほど都市は衰(おとろ)えていった。
ゼロ達がいるこのMBビルは湖から僅か数kmほどしか離れていない。
都会のど真ん中に立つ巨大なビルだ。
ソフィア医学界の心臓とも言われるこの建物では日夜、新たな医療技術が研究されている。
だが、それはただの見せ掛けだ。まがい物に過ぎない、夢物語だ。
奴らが国民の為に医療の研究をしていた日なんて、一度だってありはしない。
奴らの研究している物、奴らが創りだそうとしているもの、それは――“賢者の石”。