Blue Note ― ブルーノート
もし、チップ作動されれば立つ事は疎か、時間経過によっては、指一つ動かせなくなる。
最悪の場合、死に至るケースもある。
――イチが、死ぬ?
無数の死という文字が、頭の中を駆け巡る。
「嫌だ!!」
気がつくと、この言葉を叫んでいた。
イチの体をにぎりしめて、ありったけの声で叫んでいた。
透明な液体が一滴、イチの頬に落ちる。それが自分の涙だと気がつくのに、少し時間がかかった。
「置いてくなんて……そんなことしたらお前は……」
その先を口にするのが恐かった。死ぬ、なんて言ったら、言葉にしたら本当になりそうな気がして。
イチは、その白く細い手を震わせながらゼロにノートを渡し、涙を脱ぐってやる。
いつも澄ました顔で、周りに背を向けているゼロが初めてイチの前で流した涙だった。
イチだって、一緒にここから出たいのは山々だ。だけど、そんな自分の理由で、この計画を失敗させる訳にはいかない。
「ゼロ……僕は大丈夫だから、ね?……君はこんなところで……止まってちゃ……ダメだ」
「大丈夫なんて、嘘つくなよ! 俺はお前を連れてく。お前を見殺しになんかできないし、イチが死ぬくらいなら、こんな国、奴らの好きになったって構わない」
サイレンの音に負けまいと、ゼロは声を張り上げる。
ゼロは、背中にイチを背負うと、重い足取りで扉へ向かう。
数えられないほど階段を駆け降り、足は悲鳴を上げていた。
それでも、イチは、イチだけは離すまいと、ゼロはしっかりとイチの身体を掴む。
ガタンっと機械的な低い音が唸る。開いていた扉が、今度は逆に閉ざされていく。
この扉がしまれば、ここから出る手段は一切無くなり、まもなく駆け付けるだろう警備員に取り押さえられ、ゼロ達は永久にここから出られなくなるだろう。
急がなければ、と足を速めた、その時だった。耳元で震えるイチの声が聞こえた。
「……やめて」
最悪の場合、死に至るケースもある。
――イチが、死ぬ?
無数の死という文字が、頭の中を駆け巡る。
「嫌だ!!」
気がつくと、この言葉を叫んでいた。
イチの体をにぎりしめて、ありったけの声で叫んでいた。
透明な液体が一滴、イチの頬に落ちる。それが自分の涙だと気がつくのに、少し時間がかかった。
「置いてくなんて……そんなことしたらお前は……」
その先を口にするのが恐かった。死ぬ、なんて言ったら、言葉にしたら本当になりそうな気がして。
イチは、その白く細い手を震わせながらゼロにノートを渡し、涙を脱ぐってやる。
いつも澄ました顔で、周りに背を向けているゼロが初めてイチの前で流した涙だった。
イチだって、一緒にここから出たいのは山々だ。だけど、そんな自分の理由で、この計画を失敗させる訳にはいかない。
「ゼロ……僕は大丈夫だから、ね?……君はこんなところで……止まってちゃ……ダメだ」
「大丈夫なんて、嘘つくなよ! 俺はお前を連れてく。お前を見殺しになんかできないし、イチが死ぬくらいなら、こんな国、奴らの好きになったって構わない」
サイレンの音に負けまいと、ゼロは声を張り上げる。
ゼロは、背中にイチを背負うと、重い足取りで扉へ向かう。
数えられないほど階段を駆け降り、足は悲鳴を上げていた。
それでも、イチは、イチだけは離すまいと、ゼロはしっかりとイチの身体を掴む。
ガタンっと機械的な低い音が唸る。開いていた扉が、今度は逆に閉ざされていく。
この扉がしまれば、ここから出る手段は一切無くなり、まもなく駆け付けるだろう警備員に取り押さえられ、ゼロ達は永久にここから出られなくなるだろう。
急がなければ、と足を速めた、その時だった。耳元で震えるイチの声が聞こえた。
「……やめて」