春秋恋語り
僕の勘は的中した。
おばさんによって強行に用意された二度目の出会いの場に、深雪さんは大杉とともにやってきた。
けれど、どうも様子が変だ。
目配せして ”このまえはどうも” と二人だけに通じる顔をしたつもりだったのに、大杉は僕の視線に気がつかない振りをし、それどころかツンと顔を背け無視するような表情を見せた。
深雪さんを僕に引き合わせると、さっさと背を向けて帰ってしまったのだ。
なんだ? この変わりようは。
彼女に先週の礼を言いたいので少し待っててくださいと深雪さんに伝え、すでに出口へと向かっている大杉を追いかけた。
「待って」
「はい? なんでしょう」
「なにって、そんなに急いで帰らなくても……このまえは、どうも」
「こちらこそ、先日はありがとうございました」
従姉妹を気遣って小さな声はわかるが、やけに他人行儀な言い方だった。
「あのさ、どうしたの」
「どうもしません」
「なんか怒ってない?」
「怒ってます」
「えっ?」
予期せぬ言葉に僕はたじろいだ。
素っ気無い態度には見えたが、大杉が本当に怒っているとは思わなかったのだ。
「どうして黙ってたんですか、今日ユキちゃんに会うこと。知ってれば……」
「どうしてって、大杉には関係ないだろう」
「あります。先輩とユキちゃんのお話が進んでるのに、私が先輩と会うわけにいきませんから」
「勝手に話が進んでるだけだ、僕も困ってる。だけど、それとこれとは別だよ」
極力声を抑え、後ろの深雪さんには聞こえないように、けれど大杉にはわかって欲しくて懸命に話した。
「私にとっては同じことです」
「待てよ」
「先輩が断るって聞いたから、だから私……先輩がハッキリしないから困るんです」
迷惑そうな顔で、失礼しますとだけ言い残し、再び外へと歩き出した。
怒りをにじませた大杉の背中を見送って戻った僕を、深雪さんが不安そうに見た。
「お待たせしました。行きましょうか」
「はい……」
礼を伝えているようには見えなかったはずだが、深雪さんはそれについて何もふれてはこない。
どうしたんですかと聞かれても困るが、何も聞かれないのも居心地の悪いものだ。
身勝手だと思いながらも、控えめすぎる女性には、どうにも気持ちが傾かない。
今夜はきちんと断りの返事をするんだと心に決め、レストランへと向かった。