Garnet~大好きの伝え方
ああ……いや、そういえば。

悠里や西村さんがなにか話していたっけ?

僕にいろいろ言っていたっけ?

さあ。どうだか。

モノクロの記憶はバカみたいに無音で、思い出せやしない。

そんな僕なのに――

こうして日曜日にひとり、自分の部屋で本を読んでいると、鮮明に思い出してしまうんだ。

すぐそこのベッドに座っていた加奈を。その服装を。

彼女がベッドに作っていたくぼみや、そのしわのひとつひとつまで。

いやというほど、はっきりと。

少し意識を集中すれば、僕の目はいもしない加奈の姿を見ることができる。

ベッドに座っている加奈。その幻から目をそらすのさえ、バカ苦しい努力がいる。
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