Garnet~大好きの伝え方
キスをしたい。

きっと加奈なら、吐息を熱くして、顔を赤らめて、応えてくれる。

抱き締めたい。

きっと加奈なら、僕の腕の中できゅとと小さくなって、安らかにまどろんでくれる。

そんな風に自分にとって都合のいい加奈ばかりを想像する。

しかもタチの悪いことに、この予想は僕が本気でそうしようと思えば、叶ってしまうんだ。

加奈が、僕の色に染まってしまう。

僕が加奈を染めてしまう。

一度色の乗った紙は白くはならない。

一度踏み締められた新雪は、もとには戻らない。

一度でも僕の色に染まってしまったら、加奈も、同じ……。

それは僕にとって、聖域を侵すに等しいことだった。

だから、僕は加奈から離れたんだ。

彼女をけがしてしまう、その前に。
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