Garnet~大好きの伝え方
少しの間だったけどぬくもりを共有していたから、彼が離れて、勘違いかもしれないくらいちょっとだけ、肌寒く感じた。

ほんの、ちょっとだけど。

ゆっくり振り返ってみる。

北川くんは、ものすごく気の抜けた、でも落ち着いた顔をしていた。

憑き物が、落ちたみたいに。少し目を伏せて。

「先輩、――一個だけ、お願いしてもいっすか?」

と持ち上がり、無理やり作ったってわかる笑顔が、私にひとつ悟らせた。

彼は、私を諦めたんだって。

私を好きじゃなくなったとか、もう冷めたとかじゃなくて……

諦める以外、どうしょうもなくなったっていう、本当に、見てるこっちが切ない表情。
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