Garnet~大好きの伝え方
なん、だけど……

(居心地……悪いな)

実を言うと、北川くんと付き合うってことになった時から、図書室には絶対近寄らないようにしてた。

理由は本当に単純。

ヨシのことを思い出して、いてもたってもいられなくなるから。

ただでさえヨシと会話もままならない時に、彼を思い出す空間になんて、いられない。

古びた紙達の、少し埃っぽいにおい。

セピア調に世界を錯覚させるベージュのカーテン。

ほんの少し空いている窓からの風に吹かれながら静かに佇む観葉植物。

ささやかな呼吸と、空気の対流。

ときどき、人の身動きする気配、ページをめくる音なんかが聞こえる――

静かな、場所。
< 263 / 370 >

この作品をシェア

pagetop