Garnet~大好きの伝え方
ひとつひとつを見聞きするたびに、ヨシを思い出す。

頭の中に、彼の幻が浮かぶ。

幻と視界が一緒になって、見えないものが見えてしまいそうだ。

ベージュのカーテンが生み出す淡い影の中、本の文章に集中する横顔。

風に揺れて木の葉を泣かせる観葉植物を、ふ、と見やる眼差し。

物語に集中しすぎて忘れていた呼吸を取り返す、軽い溜め息。

吐いて、吸って、また止めてしまう、息遣い。

ページをめくる優しい手つき。

なにもかもが、ヨシを連想させる。

ヨシへ直結していく。

そうしたら当然、ヨシに逢いたくなる。

彼を探して、駆けていって、しがみついて。

服に顔を埋めて、すうって大きく息をしたくなる。

そうしないと、落ち着けない。

まだ、ただの一度もやったことはないけど……

そんな、想像だけの確信があった。
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