Garnet~大好きの伝え方
ピアノの前に座っていながら鍵盤の蓋すら開けないのは、麻里亜ちゃんに「弾いて弾いて弾いて~」ってお願いされないための事前策だった。

だって彼女は、自分が聞きたいって思ったらどんな時だって悠里くんをここへ引っ張ってくるんだから。

私におんなじわがままを言わないなんて保証はない。

絶対断りきれなくなる麻里亜ちゃんの瞳で見つめられたら、私はなにがなんでも鍵盤を叩かなくちゃいけなくなる。

弾けない人がピアノをいじると……

悲惨なことになるから、考えないでおこう。

麻里亜ちゃんが持ってるのは、楽譜みたいだ。

しかも、手書きっぽいものの、コピー。

ピアノに背中を預けた麻里亜ちゃんが、それとにらめっこを始める。

顎に人差し指を当てながら、すごく真剣な表情。
< 334 / 370 >

この作品をシェア

pagetop