Garnet~大好きの伝え方
「うんー、私もすっごいと思うんだけど……」

「え、思うん、だけど……?」

なぜか麻里亜ちゃんは難しい表情のまま、ぴたっと譜面に人差し指を向けた。

ある一節を、くるくるなぞる。

「あのね、ここ、この部分。もう少しタタッタッターンってしたほうがいいと思うの。スタッカート入れて。コンモートな感じって言うのかな」

「え……麻里亜ちゃん」

「あ、それとね、ここの次、ジョコーソ入れたいなぁって。あ、エスプレッシーヴォのほうがいいかな? そしたらとにかく、この曲のタイトルにピッタリだなって思うの」

「麻里亜ちゃんっ」

「それからねえ、ちょっと先のここ、このフレーズをグリッサンドにしてちょっと疾走感を入れるの。

そしたらもうドッキドキだし、あ、あとこっちの節はクレッシェンドしながらこう、清々しいぐらいにカンタービレさせると、たぶんきっとすっごいマッチして」

「ね、ちょちょ、麻里亜ちゃん! ごめん止まって、待ってお願い、ストップ!」

「んー、なあにぃ?」

「あのさ私、途中から全ッ然わかんない」

「あら、そう? ……さっぱり?」

「さっっっぱり!」
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