Garnet~大好きの伝え方
麻里亜ちゃんが、「ふふふぅ」といつもみたく笑う。

「でもねでもね、私、ひとっつだけ覚えないようにしようって決めてることがあるんだ」

「え、なに?」

「あのね。ピアノの、弾き方」

「……ピアノ? どうして?」

質問に質問を重ねると、麻里亜ちゃんは私の横に座った。

ピアノの椅子は無駄って思うくらい横長いから、簡単に二人座れる。

麻里亜ちゃんはとても静かな眼差しで、グランドピアノの真っ黒くて鏡みたいな蓋をつーっと撫でた。

「ピアノは、悠里の専門なの。悠里が、私に気持ちを伝えてくれるものなの。それから――悠里のピアノは、私のものなの」

「うん」

知ってる。
< 339 / 370 >

この作品をシェア

pagetop