Garnet~大好きの伝え方
変な相づちを打ちながら、なにがあるわけでもないのに天井を見上げる。

音楽室の壁は、小さな点がたくさん並んだ、変な板だ。

たしか、音楽室ならではの特殊な壁だったと思うけど……

あれがどんな効果を持つのか、私は知らない。

悠里くんは知ってるかもしれないけど。

ぼんやりと天井を眺めながら、「帰っていいよ」と言っていた時のヨシを思い出す。

私の肩に寄りかかったまま、麻里亜ちゃんが鼻歌を刻み始めた。

それはだんだんと大きくなって、ラララの旋律になっていく。

聞いたことない歌だ。

たぶん、今持ってる楽譜の曲かもしれない。

優しくて甘い曲調だ。

記憶の中に呼び出したヨシは、なにか、隠し事をしているようだった。

やましいことじゃないと思う。

ただ、私には知られたくないだけのような。

――そうたとえば、子供がコップを割っちゃって、それをこっそり片付けようとしてる……そんな風に見えた。
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