Garnet~大好きの伝え方
もしかすると本当に、彼にはもう『今さら』のことだったのかもしれない。

考えてみれば、彼は水族館の出来事から、加奈を諦めていたんだ。

そして、僕に発破をかける芝居まで打ってみせた。

むしろもう、僕や加奈に関わりたくない。

そう思っているかもしれない。

それなら僕は、これ以上話に付き合わせるよりも――

身を、引いたほうがいいに違いない。

なにも僕だって、北川に怒ってもらいたかったわけじゃない。

僕が彼にやったように、殴ってほしかったわけじゃない。

「卑怯者!」とか「弱虫め!」とか言われたかったわけでも、それ以外の罵倒を受けたかったわけでもない。

ただ、そうただ、僕が、すっきりしたかっただけ。
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