Garnet~大好きの伝え方
目覚ましを止めてしまうと、夏のセミがいなくなるみたいに、急に部屋が静かになる。

時計を止めて持ち上げた腕を横へ落とした。

力の抜けた腕がスプリングで跳ね、目覚ましのベルがちりん、と小さな音を立てる。

また、溜め息。

なんで、どうして、ヨシはあんなに怒鳴ったんだろう。

あんな風に言われたのは初めてだったから……

だから昨日はなにがなんだかよくわかんなくて、なんにも考えられなかった。

なんにも考えられないまま家に帰って、なんにも考えられないままぼうっと一日を過ごして、ご飯を食べて、お風呂に入って……

そして寝て、あんな夢を見て、今、起きた。

なんにも考えられない。

まるで、頭の中に強い衝撃が走って、その振動でなにもかも麻痺してしまったみたいに、なんにも考えられない。

どうして、なんで、ヨシはあんなにも。
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