Garnet~大好きの伝え方
「俺は加奈のことが好きだけど、加奈を傷つけたくない。だから、距離を置くことにしたんだ」

「距離ねぇ」

くすくすと、横で彼が笑う。

「真剣な話なんだぞ」

それこそ、僕の身が縦にも横にも裂けてしまうくらい、真剣な話。

だけれど彼は、笑う。

「はは、ごめんよ。加奈ちゃんの前じゃ絶対に『俺』って言わない善紀くんが、僕の前じゃ『俺』って言う。

加奈ちゃんの前じゃ絶対に本心をあらわにしない善紀くんが、僕の前じゃ簡単に白状する。それが、なんだかおかしくて、かわいそうでね」

「バカ言え」

と、思ったことが口に出た。

「俺の本心なんか加奈に聞かせられるかよ。こんな醜い感情、ぶつけられない」

「聞かせないほうが、いいの? 加奈ちゃんが聞きたいって言っても?」

「ああ、聞かせないほうがいいんだ。絶対に」

< 70 / 370 >

この作品をシェア

pagetop