Garnet~大好きの伝え方
この席ならもう、授業の間ずっと加奈の背中ばかり気にしなくてすむ。

黒板を見つめたり机にしがみついたり忙しく動く彼女の肩から、黒くて柔らかい髪がこぼれるのを気にしなくてすむ。

時々あくびをするのも、

先生からバレないように小さな伸びをするのも、

うつらうつら頭が揺れているのも、気にしなくてすむ。

いったい、彼の行いのなにを責める必要があるっていうんだ。

体は横向きのまま、頬杖を突いた悠里が真面目な、そして少しあわれむような目を向けてきた。

「でも、本当にこれでいいの? 僕としては、善紀と加奈ちゃんには仲良くしていてもらいたいんだけど?」

「これでいいんだよ。何度も言わせないでくれ」

まるで暗記したセリフを再生するように、答える。

まだ加奈は来てない。

彼女が現れても、この無機質な心のまま、同じセリフを言えるかどうかの自信は、半々だ。

彼女が僕に甘いのなら、僕だって、彼女にはとことん甘い。

決意がアイスのように溶け出して、ただのなまっちろい水溜まりになってしまう可能性だってある。
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