トールサイズ女子の恋【改稿】
 もしかしてと思って水瀬編集長の顔を見ると、水瀬編集長は罰が悪そうな表情で髪をかいて顔が赤くなっている。

「私が答えたアンケート、読みました?」
「まぁ…、その……、送られたアンケートを見れる立場だし、読んだのはBarの後だけどね。もしかして答えたのって、星野さんかなと思ったんだ。それでアイディアが浮かんで、次の号にこれを載せたいと決めたんだ」

 随分前に『Clover』のWebアンケートを答えたけど、まさか直ぐに記事にするとは思わないから、答えたのが私だと思ってくれたことに嬉しくてにやけてしまう。

「『Clover』の発売、楽しみにしてます」
「うん、楽しみにしていて」

 私は特集が書かれている紙を水瀬編集長に渡し、水瀬編集長はその紙を受けとるとファイルの中に綴じた。

「じゃあ行こうか、駅前でタクシーを捕まえて【Bar Jewelries】に向かってもいいかな?仁にお礼を言わなきゃ」
「はい」

 手を繋いで一緒に四つ葉出版社を出るんだけど、もうお互いの身長なんて気にならなくなっているから、想いが通じるのってすごいなぁ。

 藍山駅でタクシーを捕まえて乗り込み、タクシーは【Bar Jewelries】に向けて走り出した。

「そういえば水瀬編集長の所に行くか迷っていたら、Barで三斗さんが不思議なことを言ったんですよ」
「何て言っていたの?」
「仁さんに会えたから、凄くツイてるって」

 水瀬編集長はあぁっと、何か思い当たるような仕草をする。

「そっか、星野さんは仁の名前しか知らないんだよね。仁に会えば分かるよ」
「そうなんですか?」
「うん」

 水瀬編集長は勿体振り、私は頭に?マークが浮かんだままでいる。
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