トールサイズ女子の恋【改稿】
「俺の隣に写っている奴は年下だけど、将来は警察官になるんだって夢を持ってた」
「そんなに小さな頃から?」
「お父さんが警察官みたいでさ。こいつは何処か自信家で気難しい所はあったけど、バスケをしてる時は俺たちと笑ってたり泣いたりしてた」
「今は警察官になってますかね」
「アイツなら、夢を叶えて警察官になってるよ」

 水瀬編集長はにこりと微笑んでマグカップを手にして、紅茶を飲む。

「もう、終わり」
「あっ…、まだ見てたのに」

 私が夢中になってアルバムに収められている写真を見ていると、水瀬編集長はアルバムを私から取り上げてローテーブルに置いたので、もうちょっとアルバムを見たかったなぁ。

「そういえば接待に行ったみたいだけど、星野さんが呼ばれたのは何で?」
「えっと…実はここに転職する前、私は青木印刷会社で働いてたんですよ。課長から接待のことを相談されて、それで高坂専務と一緒に参加をしたんです」
「そうだったんだ。前の職場の人とは話せた?」
「そうですね…、戻ってこいと言われました」
「それはさせない。これからも俺の傍にいて欲しいから、戻るなんてさせない」
「戻らないですよ」

 水瀬編集長に強く抱き締められ、やっと恋人同士になれたのに離れるなんて嫌…と思って、私も水瀬編集長の背中に腕を回す。

 この時、接待の場に元彼がいたなんて話しては駄目な気がして、それは心の奥にしまった。
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