トールサイズ女子の恋【改稿】
◇第１５章:まるで熱帯魚のように絡み合って
　水瀬編集長は私の手を強く握りながらキッチンとダイニングを通り、もう１つのドアを開けて中に入るとパチンという音がして、それと同時に部屋の明かりが点り、窓側にはシングルサイズのベッド、その近くに黒色のローチェストがあって、その上には小さな熱帯魚が数匹泳いでいる水槽が１つ置かれているのが分かった。

「母親が熱帯魚が好きで、ここに一人暮らしをする時に渡されたんだ。熱帯魚を飼えば忙しくても家に帰らなくちゃいけないでしょっ、て」
「確かに餌や掃除をしないといけないですよね」
「うん。仕事が立て込んでも俺しか餌をやれないし、帰ろうって思えるね」

　水瀬編集長は水槽の側にある小さな箱を開けて、そこに入っている小さな欠片を積まんで水槽の中に入れたら、熱帯魚たちは小さな欠片に群がり、口をぱくぱくとさせながら欠片を食べていく姿は見ていて可愛くて、食べ終わった熱帯魚たちは仲良く身を寄せ合いながら水中を泳いでいる。

「仁も熱帯魚が好きで、たまに餌をくれるよ」
「荒木編集長って、普段どんな生活をしているのか謎ですよね」
「確かに。この餌も『美味しいから』って一言だけだから、もしかして食べたことがあったりして」
「ありえる話ですよね」

　２人で熱帯魚を見ながら、荒木編集長のことについてあれこれ話しながら笑う。

「こっち…」

　水瀬編集長が私の手を取ってベットの掛け布団を捲り、私たちは向き合うようにベットに座わっているけれど、改めて向き合うとやっぱり緊張してきちゃう。

「星野さんが嫌なら、これ以上は触れないよ？」

　私の気持ちを確かめるために水瀬編集長は距離を保っているけれど、嫌だったらこのマンションへ来ないもの。

　触れ合うことにとても心臓がドキドキしていて身体も強張って緊張しているけれど、ちゃんと言葉にして伝えなきゃ。

「水瀬編集長に…、触れて欲しい…です…」
「分かった」

　それが合図となり、水瀬編集長に腰を引き寄せられて唇を深く重ねた。
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