トールサイズ女子の恋【改稿】
「う～…、眩しい…」

　何だか眩しいなと思って瞼を開けると身体には羽毛の掛布団がかけられていて、一緒に寝ていたはずの幸雄さんの姿は無かった。

「幸雄さん？」

　私は気だるさが残るも何とか起きてベッドの下にある衣類に手を伸ばし、ふと自分の身体に視線を落とすと紅い印がいくつも散らばっていて、一線を越えた関係になったんだ…とこの部屋で交わったことを思い出して顔が火照ってきた。

　服を着てシーツと布団を綺麗に整えてドアを開けてみたらキッチンのシンク前でスマホで誰かと電話している幸雄さんの姿があり、幸雄さんの服装はジーンズにネルシャツという組み合わせでいるから、休日はこんなスタイルなのかな。

「はい、分かりました。２週間後の木曜日の夜ですね。えっ？あー…、それは会った時に話しますよ。はい…、失礼します」

　幸雄さんは電話が終えると、ふぅっと深く息を吐いてスマホをジーンズのポケットにしまう。

「おはようございます」
「もう１２時を回ってるけどね。星野さ…、美空はお腹は空いてる？」
「まだ…、水瀬編集…、えっと幸雄さんは？」

　ずっと水瀬編集長と呼んでいたから、改めて名前を言うのが慣れないや。

「俺はまだお腹が空いてないから、この後はどうする？」
「そうですね……、今日は帰ります」
「分かった。駅まで送るよ」

　昨夜の接待からあっという間にこの状態なのでどうしたいかを考え、あまり長居をするわけにもいかないし、シャワーを浴びてリフレッシュをしたいから帰宅することを選び、マンションを出て通りを歩いていると幸雄さんから手を繋がれた。

「仕事が落ち着いたら、Ｋ駅近くのカレー屋に行こうか」
「はい、案内は任せてください」

　２人で出かけられることに期待を込めて、手を握り返した。
< 114 / 162 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop