トールサイズ女子の恋【改稿】
 そして高坂専務と2人で飲むことになった水曜日、俺は待ち合わせ時間の直前まで編集部で再来月発売の『Clover』の進行を進める。

 俺が自分で書いた記事を来月号に捩じ込んで、それによって下げてしまった記事があり、このまま没にしたくなくて再来月に載せようと記事を書いた部下に説明した。

「いきなり別のを捩じ込んで、下げてしまったのは申し訳なかった。この特集は再来月発売に載せたいけど、君はどう思う?」
「正直、捩じ込んで下げるなんて水瀬編集長らしくないと思いました。ですが再来月の『Clover』のテーマの企画書を読み、この記事は再来月に回す方が良いと思います」
「ありがとう」

 『Clover』で取り上げる特集は部下が数々の企画書を書いて俺に提出するので、編集長として平等にどれを載せるかを見極めていたつもりだったけど、今回は私情を挟んでしまったのは申し訳ないと猛省した。

 そして印刷会社への締切に間に合うように作業を進めていくと編集部のドアが開かれ、高坂専務が入ってきた。

「よっ水瀬、此から行くぞ」
「今、用意します。悪いけど、今日は先に上がるね」

 俺は机の上にある資料を片付けて部下たちに挨拶し、高坂専務と四つ葉出版社を出た。

「今日はどちらに向かうんですか?」
「食事をしたいから、別の店を予約している。ここの煮込みが美味しくてさ、最近のお気に入りなんだ」

 高坂専務とタクシーに乗ってとある住宅街の地域に向かい、そしてタクシーは1軒の食事処のお店の前に停車した。

 その食事処に入ると大勢の人で賑わい、俺たちは店員に2人用のテーブルに案内されたので先ずはビールで乾杯をすると、テーブルの上に煮込み料理や豆腐料理等の数々の惣菜が置かれ、俺は煮込み料理から食べ始める。

 普段は一人暮らしだからコンビニだったり外食したりだから、こうした手作り料理は久しぶりだな。
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