トールサイズ女子の恋【改稿】
 やがて名残惜しく唇が離れて息を整えると、幸雄さんは私の髪の毛を手櫛で整えてそっと抱きしめる。

「日曜に会えるのって分かっても、駄目だね。俺って我慢が足りないのかな?」
「私だって会いたかったので、来てくれただけでも嬉しいですよ?」
「そんな風に言われたら押し倒したくなるから、我慢する」
「はい。明日も仕事がありますから、交流会では飲みすぎないようにしてくださいね」
「そうだね。先に行くね」

 2人でクスクスと笑いながら立ち上がり、幸雄さんが在庫室のドアを開けようとする。

「あっ…」
「どうかした?」
「いえ…、えっと…、行ってらっしゃい」
「うん、行ってきます」

 幸雄さんがにこりと微笑んで在庫室を出ていったけれど、あのまま交流会へ行ってしまったら行けない気がして、何だか胸騒ぎを感じて待ってくださいって言いそうになったけど、引き留める訳にもいかなくて見送るだけにした。

 一体この胸騒ぎが起きたのは何でだろう?

 私は備品を持って在庫室を出て廊下を歩いていると、高坂専務と姫川編集長と幸雄さんの3人がロビーに向かって歩く姿が見え、3人共きちっとしたスーツ姿でいるから、すれ違う女性社員たちがその姿に瞳を輝かせながら見とれている。

「姫川編集長のスーツ姿って格好いいよね!いつもはシャツを腕捲りしていて野暮ったいけど、スーツを着るとギャップがあっていいよね」
「高坂専務はいつもスーツだけど、今日も仕立てのいいスーツを着ていて素敵だよね。あれってブランド物かなぁ」
「私は水瀬編集長が格好いい!あれって人気のアパレルブランドの"S"のスーツで、しかも黒髪に眼鏡であんなに格好いいスーツ姿でいられたら、こっちは照れちゃうよね」

 女子社員たちの話が聞こえたので私も遠くから3人の姿をちらっと見たら、姫川編集長は何故か幸雄さんの後頭部を右手でペシッと叩いて、高坂専務はそれを見て大笑いしているので一体何があったんだろうか?と、頭に?マークが浮かんだ。

 とにかく無事に幸雄さんが交流会が終えて、週末のデートが出来ることを楽しみにしてよっと。 
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