トールサイズ女子の恋【改稿】
「今は水瀬の友人として話すから、これは水瀬にも伝えてね」
「はい…、どんなことですか?」
「"俺は2人の味方だから、一緒に並んで歩きたい人を離すな。"って伝えて欲しい」

 あぁ…私はなんて恵まれているんだろう……、普通なら最後まで叱責するのが当たり前なのに今も私たちのことを思ってくれていて、あの日【Bar Jewelries】で泣いた時も高坂専務たちは背中を優しく押してくれて、幸雄さんが高坂専務のことを慕うのも何だか分かるような気がするな。

「"辞める"なんて考えないで。水瀬が一番悲しむよ?」
「四つ葉出版社に…、ここに来て、良かっ…、です」

 高坂専務の言葉に鼻の奥がツンっとなって、目元は潤んできて視界がぼやけてきた。

「泣き虫だなぁ」
「それは…、高坂せ…が…」

 言葉が上手く続かないのは高坂専務の温かさを感じたからで当の高坂専務は苦笑いしているし……、すると高坂専務は椅子から立って私の側に立つと、私の頭を右手で優しくぽんぽん叩いて撫でた。

「2回も星野さんを慰めることが出来るなんて、俺ってラッキー」
「何ですか、それ…」
「俺は隣に並ぶ人を自分で選べないから、2人には幸せになって欲しいよ」
「えっ?」

 それはどう言う意味なのかと思って高坂専務を見上げると、高坂専務は少し悲しさを含んだ表情をしていた。

「あー、何でもない。仕事が終わったら水瀬のところに行って、さっきのを伝えてね」
「はい…、失礼します」

 自分の理想の恋愛は叶ったとばかりに思っていたから、その次のステップまでは頭に浮かんではいなかった。

 今回は社内恋愛によって様々な人を巻き込んで振り回してしまったから、身の振り方をもう一度考えなくちゃいけないよね。

 仕事が終わったら幸雄さんの所へ行って2人で話そう、此れからの2人の理想の恋愛を一緒に……
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