トールサイズ女子の恋【改稿】
 私は仕事を終えると真っ先に四つ葉を出て電車を乗り継ぎ、幸雄さんが住んでいるマンションの前に立っている。

 四つ葉出版社を出る前に今から行きますとメールを幸雄さんに送ったけど返事は来ず、それにめげそうになるけれど、ちゃんと幸雄さんから昨日の交流会のことを聞きたい、そして2人のことを話し合いたい、電話やメールじゃなくて会って話したいと勢いにまかせてここに来た。

「そういえば想いが通じた日も、私から来たよね」

 私はあの時と同じだと思い出して深く深呼吸をし、階段で3階に上がると廊下を歩いてドアの前に立ってインターホンを押す。

『はい』
「今晩わ、美空です。水瀬へ…、幸雄さんと話をしたくて来ました」
『……』

 ちゃんと顔を見て話したいもけれど幸雄さんの声は聞こえず、私はドアを開けて貰うまでずっと待つことにした。

 私が壁に寄りかかって待っている間、廊下を歩くマンションの住人らしき人が私を怪しい奴だと思ってちらちらと見ているけど、そんな視線に耐えながらドアが開くのをひたすら待つ。

 そして1時間、2時間が過ぎてもドアが開くことはなく、腕時計を見るともうすぐ電車が無くなる時間に差し掛かっていて、私は出直そうと決めてバックからメモ帳を取り出して『また明日同じ時間に来ます』とメモに記して、二つ折りにしてドアの隙間に入れた。

「お休みなさい……」

 夜分だしインターホンは周囲にも迷惑だからドアにおでこをつけて言い、踵を返して廊下を歩いてマンションを出ると、駅に向かって歩いた。

 ドアが開かないのは拒否されてるのだろうかと俯きながらでいると涙が流れそうで、上を向いて鼻を啜る。

「っ…、うぅ…」

 でも見上げても涙が流れ、胸が痛くて…、痛くて涙が流れる。

 近くに電車が走り、その音で泣き声はかき消されるけれど、胸の痛みは消えることが無かった。
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