トールサイズ女子の恋【改稿】

「あともう１人の編集長がいるんだけど、これがまたお目にかかるのが少なくてツチノコ扱いになっているんだよね」
「そんな人が？」
「ほら、スポーツ部があるじゃない？あそこの編集長の姿を見た人は社内でも少ないらしくって、いつの間にかツチノコ扱いになっているんだよね」

　営業部の男性いわく、四つ葉出版社のスポーツ部の編集長を見たら幸運がやってくるとか、テレビで流行りの都市伝説のように囁かれているみたい。

「高坂専務と３人の編集長たちは年齢も近いし性格はバラバラだけど、うまくそのバランスを持たせてるのはファッション部の水瀬編集長かな。姫川編集長って怖いし、高坂専務は仕事でむちゃぶりしたり、スポーツ部の編集長はミステリアスな存在だけど、水瀬編集長がいると上手く収まるんだよね」

　私はそうなんだって思ってちらっと水瀬編集長を見ると、水瀬編集長とパチッと視線が合ってしまった。

　わわっ、ここで視線を逸らしちゃったら感じが悪くなるかな。

「水瀬、ちょっと…」
「どうしました？」

　すると高坂専務が水瀬編集長の耳元で何かを話し、水瀬編集長の背中をポンッと叩いた。

「そっか、ありがとう」

　水瀬編集長はにこっと高坂専務に微笑むと立ち上がって私の所にすたすたと歩いてきたと思ったら、私の隣の席の空席に水瀬編集長が座る。

「君が新しく入った子？」
「はい、星野美空です。本日から総務課に配属されましたので、どうぞよろしくお願いします」
「僕は水瀬幸雄と言って、ファッション部の編集長で『Clover』を作ってるよ」