トールサイズ女子の恋【改稿】
「昨日は本当にご免」
「幸雄さ…ん…」

 私が幸雄さんの背中に腕を回すと幸雄さんは靴を慌てて脱いで玄関に上がり、2人して抱き締めながら勢いをつけて部屋を突っ切ってベッドになだれ込み、私は幸雄さんに組み敷かれて顔を見上げると、幸雄さんは瞳を潤ませて口はへの字みたくなっていて辛そうな表情をしている。

「突然部屋に来てご免…、住所は高坂専務から聞いた」
「私こそ、昨日は遅くまで部屋の外にいてご免なさい」
「……」

 幸雄さんは黙って顔を左右に振って組み敷くのを止めて身体を起こし、私も身体を起こして向かい合う。

「何処から話そうか」
「その口元の怪我の原因、高坂専務と姫川編集長から聞きました。でも2人は殴りあった後しか知らないと仰ってましたので、その前のことを話して下さい」
「……」

 私が知りたいことを幸雄さんに尋ねたら、幸雄さんは瞼を閉じて口をギュッと真一文字にして何かを考え、そしてゆっくり瞼を開けて私の顔を真っ直ぐ見るので、私は正座をしてゴクっと唾を飲んで耳を傾けた。
< 141 / 162 >

この作品をシェア

pagetop