トールサイズ女子の恋【改稿】
「俺が殴った相手って、美空の元彼なんでしょ?最初はアイツのことを元彼だとは知らなくてさ、普通に取引先の相手として話をしていたんだ」
「はい…。元彼の話を黙っていて、ご免なさい……」
「それは仕方ないよ。アイツの口から美空とヨリを戻したかったのに邪魔されたって言われたから、俺たちは交流会の大ホールから出て広いスペースで話をしたんけど、美空って接待でアイツにキスを迫られたんでしょ?」
「でもそれはっ…!!」
「知ってる。高坂専務が助けてくれてたんだよね」
「はい…」

 あぁ…幸雄さんはあの接待でのことを全て知ってしまったんだ……、でも幸雄さんの部屋で元彼のことなんて言いたくなかったのは本当だし……、でもちゃんと話してれば幸雄さんは元彼に手を挙げることは無かったんだと、自分の行動の浅さに辟易する。

「元彼にされたことを話さなかったの、怒ってますか?」
「今なら美空からすれば話にくかったと、ちゃんと分かるよ。ただ俺はその話の後でアイツが言った言葉が許せなくて、手を挙げたんだ」
「元彼は幸雄さんに何て言ったんですか?」
「言うと、美空が傷つくよ?」

 幸雄さんは私に言ってもいいのか気持ちを確かめる為に問いかけ、私はそれが原因なのだから知りたいと姿勢を正す。

「幸雄さん、言って下さい」
「いいの?」
「はい」
「分かった。あの日さ―…」

 幸雄さんはふぅっと細い息を吐いて口を開き、あの日幸雄さんと元彼にどんなことがあったのか話してくれた。
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