トールサイズ女子の恋【改稿】
 side水瀬幸雄

 夜から交流会があるので美空とはランチに行けそうにないと思い、ほんの少しだけでも会いたくなって在庫室に行って話をしていたら突然木村が在庫室に入ってきそうになり、慌てて2人で段ボールの山に隠れると美空の顔が至近距離にあって、美空のグロスを親指でなぞると口付けをしたくなった。

 顔を傾けて美空の唇に自分の唇を重ねると、スイッチが入ったのか口付けを止めることが出来なくて、高坂専務の忠告は頭にあるけれど目の前にいる大切な人に触れたいという誘惑には勝てず、俺って我慢がきかない性格なんだな。

 何とか押し倒したいのを堪えて在庫室から出て、姫川と一緒に1階で高坂専務と合流して3人でロビーを歩いてたら、すれ違う女子社員たちは俺たちを見て騒いでる。

「俺たち素敵だってさ」
「俺はお前と一緒に歩きたくねぇよ…、てか水瀬……」

 高坂専務は気分よく歩いていて姫川はとてもうんざりしていたけれど、俺をみる姫川の表情がみるみる険しくなっていくから?マークが浮かぶ。

「どうしたの?」
「お前、唇がテカってるぞ」
「えっ?!ホントに??」

 俺は慌てて唇を拭うと手の甲に美空が着けていたグロスの色が付着していて、しまった…とそう思っても時すでに遅しで。

「此から交流会に行くっていうのに、女といちゃいちゃしてんじゃねぇよ!さっさと拭け!!」
「痛いって!」
「いちゃいちゃしてるからだよね~」

 姫川に頭をペシッと叩かれて高坂専務には思いっきり笑われるし……、確かにいちゃいちゃをしたけれど、思いっきり叩くことはないだろと叩かれた所に手をあてながらタクシーに乗った。
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