トールサイズ女子の恋【改稿】
「ふん、あんたって俺よりも美空よりも背が低いじゃん。美空って趣味が悪いな」
「美空の事を悪く言うな!」
「うっ!」

 もうその時は手が出ていて、自分のことは言われてもいいが大切な人のことを散々なまでに言われて我慢が出来なかった。

『私って身長コンプレックスがあって』
『背が高くても、恋、したいです』

 目の前の男を殴っていく中で美空の哀しそうな顔が浮かび、それも払しょくしたくて拳に力を込めて相手の口元を殴ると、向こうも応戦する。

 美空がBarで身長コンプレックスを抱えているから恋愛に消極的にいることを話してくれたけど、俺と付き合うことで『背が高くても、恋をしたい』って言っていくれから、美空の隣に並んで一緒に歩くのは俺なんだ、こんな奴に美空を渡せない!

 其処からは騒ぎを聞きつけた高坂専務たちと青木印刷会社の人がくるまでお互いが手をだしあって、俺は眼鏡も割れてしまい口元には怪我を負ったので姫川がフロントに救急箱を取りに行っている間、高坂専務が俺にハンカチを渡した。

「水瀬……、やってくれたな。殴った理由は?」
「すいません、それは言えません。殴ったことの非は認めますが、理由は話したくないです」
「言えないって…、普段のお前ならここまですることは無いと思うんだけど?」

 俺はハンカチを口元の怪我に充てながら高坂専務に謝るけれど、殴った理由を言えば必ず美空の話題が出るし、それだけは避けたい。

「おい!美空は必ず俺の所に戻らせるからな!!!」
「いいから、向こうにいくぞ」
「成る程ねぇ…、取り敢えず姫川が来たら帰ろうか」
「はい…」

 そう言ってアイツは青木印刷会社の人に連れていかれ、高坂専務は何かを察したようでそれ以上は何も言わなかった。

 これが交流会で起こった真相で、俺は次の日の金曜日に謹慎を言い渡されたのだった。
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