トールサイズ女子の恋【改稿】
 side星野美空

「……」

 幸雄さんから交流会での出来事を聞いて、絶句する。

 私の知らないところで2人が話をして殴りあっていたなんて……、私が原因で幸雄さんがこんなに酷い怪我を負ったと思うと胸が張り裂けそうで、心が痛い。

「俺は身長の低い扱いはもう慣れているけれど、俺の大切な人をああいう風に言われて我慢が出来なかった!」
「幸雄さん…」

 幸雄さんは怒りを堪えるように表情を歪ませ、私は"大切な人"と幸雄さんの口から言ってくれたのがとても嬉しくて、好きになったのが幸雄さんで本当に良かった。

「姫川に編集部で怒鳴られて手を挙げた理由を聞かれたけど、どうしても美空が出てくるでしょ?それに皆にはまだ付き合っていることを言ってなかったし…、編集部を出た時に美空に会ってかなり焦ったよ」
「すいません、盗み聞きするつもりはなかったんです」
「美空の表情をみて『あぁ編集部の中の話を聞いてたんだな』と思って、でも言えば美空のコンプレックスに傷つくと思ったから、そのまま通り過ぎたんだ」

 私も鉢合わせした時は何て言えばいいか焦ったし、無言で横を通り過ぎた時はショックで振り向いて追いかけることが出来なったけど、幸雄さんにもちゃんとした理由があって通り過ぎたんだ。

「美空が俺の部屋に来た時にドアを開けなかったのは、どんな風に話せばいいのかまだ心の整理もついてなかったんだ」
「それなのに押しかけてご免なさい…」
「いいや。あんな時間に外にいて寒かったよね?」

 体温を確かめるように幸雄さんは両手で私の頬を優しく包むと、私も幸雄さんの手に自分の手を重ね、やっぱ幸雄さんの手は温かくて心が幸せに満たされていく……。
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