トールサイズ女子の恋【改稿】
 水瀬編集長がかけてる眼鏡は細目の黒縁フレームで、耳にかけるテンプルの所は赤と緑のチェック柄のデザインになっていてスタイリッシュな眼鏡だ。

 髪型はサイドがすっきりしたツーブロックで前髪は眉にかからないようにしていて、流石ファッション部の編集長とあって全身がお洒落な人。

「私も『Clover』を読んでます」
「本当?そう言ってもらうと嬉しいな」
「お世辞じゃないですよ。コーデのページはいつも参考にしてますし、毎号読むのが楽しみなんです。先月もコーデのページに掲載されていた洋服が欲しくなって、お店まで買いに行きました」
「そう?此れからも星野さんに喜んで貰えるように、頑張ろうかな」

 水瀬編集長は頬をぽりぽりと掻き、とても嬉しそうにしている。

 雑誌をよく読んでいるのは本当だし、その雑誌を作っている編集長に直に伝えられることはここに入社して良かった。

「他のメジャーな雑誌に比べてうちのところはまだ読者が増えないから、色々と内容を考えたりしないとね」
「そろそろ二次会に行くよー」

 遠くから高坂専務の声がしたので、そんなに時間が経っていたんだ。

「星野さんは二次会に行くの?」
「私は家が遠いので、ここまでにします。水瀬編集長は行くんですか?」
「んー、締め切りが近づいているし、俺もこの辺であがるよ」
「そうですか、また明日―…」
「ちょ、ちょっと待って!」

 水瀬編集長は私が話すのを制すると立ち上がって、高坂専務の所に何かを相談して、また此方に戻ってきた。

「女の子1人で帰させるには駄目だから、駅まで一緒に行こう?」
「そそそ、そんな!ここから駅まで遠くないので、1人で大丈夫ですよ」

 忙しい上に送って貰うなんて凄く申し訳ないし、夜道歩いてもこんなデカイ女に興味を持つ人なんていない。

「俺がそうしたいんだよね」

 そんな真剣な顔で言われるとこっちもギクシャクしちゃうし、素直になるのがいいかも。

「でわ、お言葉に甘えて…」
「良かった、じゃあ行こうか」
「はい。あっ、あの…、総務課の人たちに挨拶してきます」
「ん。俺も高坂専務の所に行ってくるから、お店を出たところで」
「分かりました」

 私は総務課の人たちにここで失礼することを伝え、外で水瀬編集長を待つことにした。

 なんだか急な展開になっちゃったけど、駅までだと思えばいいよね。
< 15 / 162 >

この作品をシェア

pagetop